ストレスで抜け毛が増える?医師が教える髪の毛が抜ける仕組みと毛髪治療
「メンタルヘルス不調」という言葉をご存知でしょうか?「メンタルヘルス」とは
「心の健康」の事で、ストレスにより抜け毛が出始めた方は、「メンタルヘルス不調」の疑いがあるため、早めのケアが必要です。
抜け毛の原因はストレスだけではありませんが、その「引き金」になっている場合が
あるため、まずストレスと抜け毛の関係についてご説明したいと思います。
目次
ストレスで抜け毛が増える?髪の毛と男性ホルモンの因果関係
ストレスと抜け毛にはどのような関係があるのでしょうか?
ストレスで抜け毛が増える原因【血行不良】
過度なストレスの影響で「自律神経」が乱れることにより血管が収縮し、頭皮が血行不良になって抜け毛へ繋がります。
またホルモンバランスも乱れるため「男性ホルモン」が優位になる事がAGA(男性型脱毛症)の一因になると言われています。
「テストステロン(男性ホルモン)」は「5α還元酵素(Ⅱ型)」という酵素と結びついて「ジヒドロテストステロン(悪玉男性ホルモン)」へ変化し、これが「男性ホルモン受容体」と結合すると脱毛スイッチがONになります。
ストレスで抜け毛が増える原因【亜鉛不足】
さらにストレスは活性酸素を発生させるため、これを分解するために「亜鉛」を消費します。亜鉛は新しく髪を作るために必要なものであるため、必然的に薄毛に繋がっていきます。気になる方はネットなどで自分のストレスをチェックしてみるのも良いでしょう。
ヘアサイクル(毛周期)の乱れが脱毛症を引き起こす
では「脱毛症」とはどのような状態の事をさすのかと言うと、一般的には「ヘアサイクル(毛周期)」が変化した状態のことを言います。
髪の毛は一日あたり約50〜100本程度抜けるという話は聞いたことがあると思いますが、ヘアサイクルには「成長期」→「退行期(毛球が退化する期間)」→「休止期(脱毛期間)」の3つのステップがあり、毎日抜けているのは最後の休止期にあたる髪の毛になります。このうちの成長期が短くなるとか、休止期の抜け毛が増えた状態が「脱毛症」です。
前述のAGA(男性型脱毛症)は通常2〜6年ある成長期が1年以下になることで薄毛になります。しかし円形脱毛症のような自己免疫異常や薬剤の副作用による脱毛症もあり、全てがヘアサイクルの変化による脱毛とは限りません。
抜け毛は改善できる!病院で行う毛髪医療
抜け毛を改善するための治療にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは代表的な毛髪医療と実用化が期待されている再生医療についてご紹介したいと思います。
(1)抜け毛の改善方法【自毛植毛】
後頭部の一番出っ張っている部分の下は男性ホルモンの影響を受けにくいため、毛髪が残っている場合が多く、この部分の「毛包(皮膚の下の毛の組織)」を脱毛部分へ移植するのが「自毛植毛」です。腕のよい医師であれば脱毛症である事が全く分からなくなります。しかし頭皮の状態が良くない場合は、植毛しても上手く育たない場合があります。またストレスが改善されていないとか、AGA(男性型脱毛症)の場合は、植毛した部分以外の抜け毛は進行していきます。
(2)抜け毛の改善方法【円形脱毛症治療】
円形脱毛症はストレスが主な誘因と思われがちですが、ウイルス感染、疲労、外傷などにより「自己免疫異常」が起こり、毛包が攻撃されることによっても円形脱毛症が起こる事が明らかになっています。
しかしその根本的な原因は「遺伝子」が関係していると考えられています。
代表的な治療法としては「ステロイド局所注射」、「局所免疫療法」などがあり、
早めに治療するほど効果が高くなります。
「ステロイド局所注射」は、炎症や自己免疫反応を抑制するステロイドを脱毛部位に直接注入する方法です。注射の量や頻度に制限があり、傷みや副作用も伴う場合がありますが、成人の場合は比較的効果が期待できる治療です(保険適応)。
「局所免疫療法」は人工的にかぶれを起こすことで発毛を促す治療法です。歴史のある
治療ではありますが、治療期間が長いことや皮膚病が悪化するという問題点があります(保険適応外)。
しかしこれらの治療でも結果が出ない場合もあるため、次にご紹介するAGA(男性型脱毛症)治療の一つである「ミノキシジル」による治療も選択肢の一つと考えて良いでしょう。頭皮の血行が促進される事により毛髪の成長が期待出来ます。
(3)抜け毛の改善方法【AGA(男性型脱毛症)治療】
多くの男性の薄毛の原因がこのAGA(男性型脱毛症)のため、科学的なエビデンス(根拠)に基づいた治療が行われています。
AGA(男性型脱毛症)は「男性ホルモン」が関係していると先に述べましたが、もう一つ「遺伝子」も関係していると言われています。 AGAになりやすい遺伝子があるのです。
遺伝子にはいくつかタイプがあり、その中でもAGAになりやすいのは「5α還元酵素(Ⅰ型)」「5α還元酵素(Ⅱ型)」「男性ホルモン受容体」の遺伝子タイプと考えられています。
現在確立している治療法は、AGAを促進する遺伝子「5α還元酵素(Ⅱ型)」をさまたげる薬剤「フィナステリド」で抜け毛を食い止め、頭皮の血流を促進させる「ミノキシジル」で毛髪の成長期間を延ばすという治療法です。
2016年からは「5α還元酵素(Ⅰ型)」「5α還元酵素(Ⅱ型)」の両方を阻害する「デュタステリド」という薬が「フィナステリド」と同じく、AGAの改善に医学的な根拠があると認められました。
これは今までの薬剤「フィナステリド」より早い効果が期待出来ます。
AGA治療を行うクリニックでは内服薬、外用薬、注射などを組み合わせた治療が主流となっており、格段に治療法が進歩しています(保険適応外)。
男たちの美容外科でも、遺伝子のタイプを調べることが可能なので、お気軽に相談にお越しください。
抜け毛改善の最新医療「毛髪再生医療」について
脱毛症の原因が解決しても毛が生えてこない、あるいは進行したAGA(男性型脱毛症)の場合、毛包の再生は期待できません。
そこで実現に近い「毛髪再生医療」について最後にご紹介したいと思います。
毛髪再生医療には3つの方法があります。
抜け毛改善の最新医療「毛髪再生医療」 その1
毛包は2つの「幹細胞※」によって再生されていると考えられています。
毛包上部の「バルジ」という領域にある「上皮系幹細胞(じょうひけいかんさいぼう)」と下部の「毛乳頭(もうにゅうとう)」にある「間葉系幹細胞(かんようけいかんさいぼう)」、この2つの幹細胞が連携して髪の毛は作られていますので、これらの幹細胞を取り出して新しい毛包(再生毛包原基)を作り、頭皮に移植する方法が1つ目の治療法です。
抜け毛改善の最新医療「毛髪再生医療」 その2
2つ目は毛球部の底部にあり毛母細胞(もうぼさいぼう)を増殖させる「毛球部毛根鞘細胞(もうきゅうぶもうこんしょうさいぼう)」を体外で培養し、脱毛している部分に注入する方法です。
抜け毛改善の最新医療「毛髪再生医療」 その3
3つ目は京都大学の山中教授らが開発した「iPS細胞」を使って毛包を増やす方法です。残念ながらいずれも課題があり実用化はされていませんが、近い将来何らかの形で実現する可能性はあるでしょう。
※分裂して自分と同じ細胞を作る能力(自己複製能)と、別の種類の細胞に分化する能力(多分化能)を持ち、際限なく増殖できる細胞の事。
この記事を監修した人
宮部 崇(みやべ たかし)医師
日本麻酔学会 専門医/日本臨床麻酔学会 会員/日本医療毛髪再生 研究医/日本抗加齢医学会 会員
1999年 佐賀医科大学卒業。麻酔科医の傍ら、積極的に美容医療へも携わり知識と経験を蓄積。2006年男たちの美容外科・ドーズ美容外科総院長に就任。2014年に医療法人一之会を設立し、理事長に就任。薄毛の種類を見極め、患者様に最適な治療法を提案。最先端の薄毛治療から再生医療まで常に新しい治療に興味を向け、男性専門の発毛治療の普及に尽力。
治療できる病院