フィナステリドとは?効果や副作用について現役医師が教えます
男性型脱毛症(androgenetic alopecia:以下、AGA)は、男性の前頭部と頭頂部の頭髪が
軟毛化して細く短くなり、最終的には額の生え際が後退し頭頂部の頭髪がなくなってしまう現象です。
日本人の場合には20歳代後半から30歳代にかけて発症することが多く、頻度は約30%といわれています。壮年期の男性にあっては、薄毛はその人の印象を大きく左右するため、社会生活におけるストレスは強く、なんとか改善したいという欲求も切実です。
従来は育毛剤以外には薬剤は存在しませんでしたが、2005年にAGAの内服治療薬としてプロペシア○Rが発売されるにあたり、AGAの病態と治療に関して正確な知識をもつ必要性が生じてきます。
薄毛の原因とフィナステリドの効果
薄毛の原因は様々ですが、最も一般的な原因の一つに**男性型脱毛症(AGA)**があります。AGAは、男性ホルモンの一種であるジヒドロテストステロン(DHT)が毛根を攻撃し、髪の毛が細く短い毛に変化したり、生えなくなったりする病気です。
AGAの原因となる主な要因
遺伝: 家族に薄毛の人がいる場合、遺伝的な要素が強く影響します。
男性ホルモン: DHTが毛根を攻撃し、脱毛を促進します。
加齢: 年齢とともにAGAを発症するリスクが高まります。
生活習慣: ストレス、睡眠不足、喫煙、不摂生な食生活などが、AGAを悪化させる可能性があります。
フィナステリドの効果:AGA治療の主力薬
フィナステリドは、AGA治療薬として広く使用されている薬です。この薬は、DHTの生成を抑制することで、脱毛の進行を止め、発毛を促進する効果が期待できます。
フィナステリドの作用メカニズム
DHT生成抑制: フィナステリドは、テストステロンがDHTに変換されるのを阻害します。
毛髪の成長促進: DHTの減少により、毛髪の成長サイクルが正常化し、太く長い毛が生えやすくなります。
脱毛の進行抑制: DHTによる毛根への攻撃が抑えられるため、脱毛が進行しにくくなります。
フィナステリドの効果
発毛効果: 薄毛が進行している部分に、新しい髪が生えてくることがあります。
脱毛の進行抑制: 既存の髪が抜け落ちるのを防ぎ、髪を維持することができます。
髪の太さや密度: 髪が太くなり、密度が増すことで、より自然な髪を取り戻すことができます。
フィナステリドの注意点
副作用: 男性性機能低下、勃起不全などの副作用が起こる可能性があります。
効果が出るまで時間がかかる: 効果を実感できるまでには、数ヶ月から数年かかることがあります。
継続的な服用が大切: 効果を維持するためには、継続して服用する必要があります。
個人差: 効果や副作用には個人差があります。
フィナステリドは、AGA治療において非常に有効な薬ですが、全ての患者さんに効果があるわけではありません。また、副作用のリスクも考慮する必要があります。AGA治療を検討している場合は、必ず医師に相談し、自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
フィナステリドの持続効果は?
フィナステリド1㎎を内服すると、3-6ヶ月で効果が現れ、6-12ヶ月で効果が最高に達し、以降は定常状態となります。
永久に右肩上がりに効果が増大するわけではありませんが、内服を中止すると3-6ヶ月で効果は消失し、徐々に抜け毛が増えて薄毛が再燃するため、投与1年後以降も内服を継続してもらうよう予め説明しておくことが重要です。
また、AGAを進行させるジヒドロテストステロンの原因である5α還元酵素にはⅠ型とⅡ型があります。
Ⅰ型は全身の皮膚、皮脂腺、汗腺、肝臓などにあります。
Ⅱ型は外陰部皮膚、前立腺、精嚢、精巣上体、肝臓、前頭部・頭頂部毛包、髭、胸毛
などにあります。
フィナステリドはⅠ型よりもⅡ型に約100倍親和性が高いです。フィナステリドの作用は5α還元酵素Ⅱ型を抑制し、テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を抑制します。
その結果、月単位まで短くなっていた毛髪の成長期が年単位へと回復することで、軟毛化や抜け毛が改善する効果があります。
なお、フィナステリドは血清ジヒドロテストステロンを約70%低下させますが、5α還元酵素Ⅰ型活性には影響を与えないので、血清ジヒドロテストステロン値がゼロになるわけではありません。
フィナステリドで懸念される副作用は!?
フィナステリドは男の胎児や思春期前の男子の外性器の発育に大きな影響を与えることが報告されています。
そのため、本薬剤の適応は20歳以上の男性に限られており、妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳婦への投与は禁忌となっています。
わが国で20歳以上の男性に実施されたフィナステリドの治験では重篤な副作用の報告はありません。
性欲の減退、勃起機能不全、射精障害、精液量の減少などが報告されていますが、
フィナステリドとの関連が認められたものはなく、ほとんどの症例で投与を中止することなく症状が消失しているようです。
なぜフィナステリドによって性機能にかかわる副作用が生じていないと認められているのかというと、男性ホルモンのテストステロンとジヒドロテストステロンはそれぞれ異なる機能を持っており、フィナステリドはジヒドロテストステロンの原因である5α還元酵素Ⅱ型を抑制する薬だからです。
テストステロンは、陰茎や陰嚢・筋・骨格の発達、精子産生や性欲など性機能に関連した機能を持っています。
一方、5α還元酵素Ⅱ型のよって活性化されたジヒドロテストステロンは、成人の前立腺の増大、体毛・髭の増加、痤瘡、AGAに関与しています。
この点から考察すると、フィナステリドによってジヒドロテストステロンが抑制されても、報告されたような性機能に関連する副作用は理論的には生じません。
テストステロン | ジヒドロテストステロン | |
---|---|---|
胎児期 | 男性内性器の発達 | 男性外性器の発達 |
(精嚢、射精管、精巣上体) | (陰茎、陰嚢) | |
思春期・成人期 | 陰茎・陰嚢・筋・骨格の発達 | 前立腺の増大、体毛・髭の増加 |
精子産生、性欲 | 痤瘡、男性型脱毛症 |
フィナステリドの消化管吸収は食事の影響を受けないので、食事に関係なく内服が可能です。フィナステリド1㎎/日を内服した場合、薬の血中濃度が4時間程度で薄くなってくるため、1日1回の内服が必要です。
フィナステリドの排泄は39%が尿中で、57%が糞中ですが、腎機能障害患者に対して
経口容量を減量させる必要はありません。
健康高齢者に対しても、容量調節する必要はありません。
しかし、肝機能障害患者における安全性は解明されていませんので、肝臓に病がある方の服用には注意が必要です。
基本的にはフィナステリドは非常に安全な薬剤であり、薬剤相互作用もないことから
処方しやすいです。フィナステリドの使用について気になる方はまずは気軽に専門医が
いる医院へ相談してみてください。
この記事を監修した人
田崎 公(たさき いさお)医師
日本形成外科学会 専門医
1995年佐賀医科大学卒業。形成外科を専門とし、多数のオペを熟し経験を積む。2013年にドーズ美容外科佐賀院の院長に就任。不安を抱え来院される患者様に対して、親身かつ的確なオンリーワン治療を提案。患者様へ質の高い美容医療を提供するため、美容医療の現場で日々研鑽に励む。得意分野である外科的治療においては、繊細な手技を駆使して患者様への負担を最小限とし、傷あとをより美しく仕上げることをモットーとする。
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